色彩の魔力 文化史・美学・心理学的アプローチ

色彩の魔力
色彩の魔力
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浜本 隆志 伊藤 誠宏
明石書店
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序 章 色彩のプリズム - 浜本隆志
第1章 聖なる色・邪悪なる色 - 浜本隆志
第2章 青のヨーロッパ――その軌跡を追って - 柏木治
第3章 黒の横顔――影絵の肖像画 - 森貴史
第4章 東西美術の光り輝く色彩 - 中谷伸夫
第5章 色彩と心理 - 伊藤誠
終 章 色彩のカノン(規範)は死んだのか - 伊藤誠宏・浜本隆志

色彩の本なのに白黒でしかもちょっと高い(2100円)っていう根本的な問題はあるけれど
内容は非常にしっかりしていて優れた本。
色彩について考えるにあたっては是非とも読んだほうがいい一冊。

<序 章 色彩のプリズム>
色彩はその多様性ゆえに、色彩論を語るに当たっては切り口が大事という話。

  1. 社会学的アプローチ
  2. 文化史的アプローチ
  3. 美学的アプローチ
  4. 心理学的アプローチ

それぞれの簡潔な具体例。
序章だけでも充分読む価値あり。

<第1章 聖なる色・邪悪なる色>
神の金色とユダの黄色。キリスト教文化圏に限定された差別色。
マリアの白と魔女の黒。
ポジティブな赤と、ネガティブな赤。
権威を示す紋章と、否定的な縞模様
上記のキリスト教的色彩感覚の崩壊と、異端・異教の色彩、「個人の好み」


金色とか原色の赤・青あたりはどの文化でも似たようなイメージを持つのに対して
ユダの黄色やら縞模様に代表されるような、文化によって全然違う色彩感覚は興味深い。
「個人の好み」もその個人を作る文化的背景があるわけでやはり無視はできない。
黄金色、空の色、炎の色、血の色、うんこ色etc.人間にとって生活に密着してて永遠に同じ色のものの色に対する影響力は昔も今も将来的にもまぁ変わらんだろうし。


<第2章 青のヨーロッパ――その軌跡を追って>
プラスの青、マイナスの青。
染色技術の革新とマリアの青、王の青、ミシェル・パストゥロー曰く「青の革命」
宗教改革→モラルの黒、無彩色の時代
インディゴと大青、新大陸でのインディゴ発見&大量輸入
18世紀、宮廷文化・サロン文化→青の新しい価値、青の民主化
ゲーテ『色彩論』
フランス革命の青
象徴化・記号化される色と、されにくい青


青は原色でありながらも、染料やら染色技術に絡んで地位が上がったり下がったり
最終的に今の形で落ち着くまでの変遷がおもしろい。


<第3章 黒の横顔――影絵の肖像画
ネガティブな黒、しかし好まれる黒
ドイツの影絵文化
シルエット、影絵の肖像画の流行
シルエットと観相学
非日常のうつわの黒=影


闇の色、悪魔の色でありながらも、絶対的な力強さ、全てを塗り込めた神秘性を持つ黒という色のもつ魔力について、影絵・シルエットから観たもの。
黒という色は特に「魔力」という言葉がしっくりくる。


<第4章 東西美術の光り輝く色彩>
日本の美術における「金銀」の宗教性と世俗化
西洋中世の「光」、金の冠、ステンドグラス


「光の色彩」って話だけども、日本は金の量もさることながら職人の技術がおそろしく高水準だったってのも違いが出てくる原因の一つか。
ステンドグラスに関しては、日本は雨多いから光がさしてうおおおおおおおおおおっていう場面に繋がりにくいからじゃないかな。
おもしろいのは光の色彩の表現は「金銀」も「ステンドグラス」も印刷やパソコンのモニターじゃどうにもならん、実物見ないとわからないってとこだねーw


<第5章 色彩と心理>
言葉と色彩、共感覚・色聴
共感覚者とは関係なく)特定の言葉と色彩の結びつき(例:情熱=赤)
言語色彩同定法による、言葉から色彩を連想する調査、結果の表。
色彩連想の性差、とりわけピンク


めちゃくちゃ興味深い項目。
デザインにおいて、あるいは文章を書く上で把握しておく価値のあるもの。


<終 章 色彩のカノン(規範)は死んだのか>
崩壊するもの、存続するもの、記号化するもの、自然、現代の色彩と流行色


〜まとめ〜
色彩について考える上でひじょおおおおおに価値のある一冊。
デザイナーとか文章書きとか創作芸術な人とかその辺には特にオススメ。